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2013年3月 9日 (土)

燃費がいいからと言って売れるとは限らない…。

 長期にわたりご愛読(??)いただいた,「800ccカー」の連載もいよいよ大団円を迎えました。ただ当初の計画では3代目ヴィッツで大団円の予定だったのですが,コルトがミラージュに名前を戻して6代目になることがわかり,まさかまさかの連載延長となったわけです(というか,それ以前にいろいろと理由をつけて連載を延ばしていたのですが)。
 主要諸元の比較ですが,47年前のコルト800は2ドアセダンのデラックス,現行6代目ミラージュは5ドアのMを取り上げました。
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     コルト800  6代目ミラージュ
全長(mm) 3650    3710(102%)
全幅(mm) 1450    1665(115%)
全高(mm) 1390    1490(107%)
ホイールベース(mm) 2200 2450(111%)
前トレッド(mm) 1220 1430(117%)
後トレッド(mm) 1185 1415(119%)
最低地上高(mm) 165  150(91%)
室内長(mm) -     1870(-)
室内幅(mm) -     1390(-)
室内高(mm) -     1220(-)
最小回転半径(m) 4.5 4.4(98%)
重量(kg) 750     870(116%)
乗車定員(人) 4    5

エンジン形式 直列3気筒水冷 直列3気筒水冷
弁形式 2ストローク  DOHC4バルブ
排気量(cc) 843    999(119%)
最高出力(ps/rpm) 45(38)/4500 69/6000(182%)
最大トルク(kgm/rpm) 8.3/3000 8.8/5000(106%)

変速機 手動4速2-4シンクロ CVT
駆動方式 FR     FF
前サスペンション ウィッシュボーン ストラット
後サスペンション 板ばね トーションビーム
燃料タンク(l) 32   35(109%)
燃費(km/l) 18    27.2(151%)
ブレーキ 4輪ドラム 前ディスク後ドラム
タイヤ 6.00-12 4PR 165/65R14

価格(円) 495000   1188000
高卒国家公務員初任給比 30.7 8.5(28%)
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 現行ミラージュが先代のFFコルトよりもダウンサイジングして登場したため,車幅とホイールベース以外はサイズ的に新旧似通っているというのが印象的でした。全長はわずか2%の増,全高は7%の増でしたありません。ただし全高はそれらより多めの15%増となっているのですが,それでも6代目ミラージュは5ナンバーフルサイズではありません。
 車幅が広がっている分トレッドも広くなっています。ところがホイールベースは全長の2%増しに比べて大幅に長くなった11%増しとなっています。
 驚くべきはホイールベースが長くなり,しかも小回りに不利なFF方式だというのに,ミラージュの最小回転半径はコルト800よりも小さい4.4mとなっています。現行ミラージュのエンジンルームの設計が欧州的にタイトなものではないのか,はたまたコルト800の設計陣が小回り性能に対してずぼらだったのか,本当のところは知る由もありません。
 現行ミラージュの重量が衝突安全性能を確保して900kgを割っているのはすごいことだと言われています。一方のコルト800は軽快さに欠けるデザインだったのですがそれでも現行ミラージュより軽い。当時の技術で軽いということは,安全性能もきっと軽いものだったのでしょう。

 47年を経てエンジンがどちらも直列3気筒だったというのも驚きです。ただ中身はミラージュが4ストロークDOHCなのに対しコルトは2ストローク。コルトのエンジン出力はグロス45psとクラストップでしたが,現行のミラージュはそれをはるかにしのぐネット69ps。ただトルクはミラージュの8.8kgmに対し,コルトの8.3kgmはさすが2ストローク,といったところでしょうか。
 ただ2ストローク故に燃費は悲惨な状況で,現行ミラージュが非ハイブリッド登録車中トップの27.2km/lなのに対し,コルトはガソリン価格の安かった当時といえども絶望的な定地燃費18km/l。実は私,すでにアラウンドフィフティですので子どもの頃は身の回りに多くの2ストローク車が走っていたはずなのですが,中判サイズのナンバーをつけた(軽自動車ではなく登録車,という意味)2ストローク車を見た記憶がないのですね。ファストバックボディのコルトを見たことは何度もあったのですが,それらのコルトが白煙をあげてうるさく走り回っていた記憶がない。ということは,私が小さいときに見たコルト・ファストバック車は全て4ストロークの1000ccか1100cc車だったということであり,2ストロークのコルト800はずいぶん早い時期に淘汰されてしまったということなのでしょう。何度もいう通り,この直後に高性能で低価格のサニー,カローラが出現します。この燃費の悪さでは,コルト800の多くは早期に乗り換えられ,中古車市場に出回ることなくすぐにスクラップにされてしまった,といっても言い過ぎではないかもしれません。

 今から思えばティザーキャンペーンだったのか,「ガソリン車トップの燃費性能を持つ新型車を開発中」と三菱自動車は早くから公表していました。そのクルマは以前の小型車の名前を復活させて「ミラージュ」と名付けられ,日産4代目マーチのようにタイで生産され,平成24年春にそのタイで販売開始,次いで夏に日本導入されました。
 ボディの軽量化,空力特性の向上,エンジンの高効率化を積み重ね,マツダの「スカイアクティブ」のような特別な技術を導入しなくてもクラストップの燃費を実現,価格も抑えて登場しました。登場後2カ月ほどは受注も順調で,三菱製の乗用車が久しぶりに登録車販売ベスト30位に復活しました。

 しかしそのデザインはなんといったらいいのか,スポーティなわけでもなく,(4代目マーチよりはましかも知れないが)愛らしいわけでもなく,いまひとつ特徴に欠けるデザイン,もしどこかで見たことがあるかといえば,そうだ三菱500がこんなデザインだったかも,という程度のデザインのような気がします。三菱500が正常進化したものが6代目ミラージュだと言っても言い過ぎではない。

 どうしてこのクルマがこんなに特徴がなく仕上がってしまったのか? それは,
  http://kunisawa.asia/article/57751719.html
の記事を読んでなるほどと思いました。ただこの筆者はそれを技術者の受けた教育のせいだとみているようですが,私はそうではなく,そもそもこの三菱という企業の体質のせい,つまり,もうすでにフルラインメーカーという規模の会社ではないのにもかかわらず,グループ企業のために,よそのメーカーから高級車を買ってきて,そこに三菱のマークをつけ,プライスリストに載せなければならない,そういうようなことではないかと思っているのです。

 6代目ミラージュに話を戻すと,これを売り出したとき,テレビCFに有名俳優を使ったのはいいけれど,キャッチフレーズが「乗ってミラージュ」という安直なもので,そのコマーシャルの作りも,クラストップの低燃費や使いやすさをまじめに訴えたものではなく,どことなく安作りな感じがしたのが気になりました。
 で,これも想像でモノを言うのですが,なにしろタイから輸入するので,あまりにも人気が沸騰するとそもそもタマを潤沢に用意するのが難しいし,日本に輸入したあとのPDI(納車前検査)作業もばかにならない。この6台目ミラージュ,三菱自動車としても,実は「あまり人気になってもらっては困る」車種だったのかも知れない。だからあんな安作りでまじめな感じがしないコマーシャル戦略になってしまったのだろうかと思うのです。

 ところが三菱自動車の思い通りというか,それ以上に,ユーザはそんなに甘くなかったというか,6代目ミラージュは全く売れません。
  http://car-research.jp/mitsubishi/mirage-9.html
  http://toyokeizai.net/articles/-/12942
 これだけ燃費がよくて,これだけ安いのだから,売れないはずがない,と思ったらとんでもない。三菱自動車は,再び登録車販売ベスト30位に載らないメーカーに逆戻りしてしまいました。
 ミラージュと同じ頃,フォルクスワーゲンから"up!"という,ミラージュと同クラスの車種が登場しました。VW製ですので価格はミラージュより高いです。ただ,up!にはプリクラッシュセーフティシステムが標準装備されているのでそのことを考慮に入れると,お買い得度はミラージュとそんなに変わらない。
 統計的にはどうなのかわからないのですが,今日現在で,私は公道を走っているup!を7台見たのですが,その間6代目ミラージュが公道を走っているのを,実に3台しか見ていない。感覚的には,6代目ミラージュはup!よりもかなり売れていない,という様相です。ひょっとすると,ミラージュの9月,10月の好調な売れ行きは,実はグループ企業内の購入によるものだったのか? そんな疑いも持っています。

 まぁ,三菱自動車という企業自体が,すでに販売の軸足を日本から東南アジアとロシアに移しているので,もはや日本で三菱マークのクルマが売れなくても痛くもかゆくもないのかも知れません。でも,それでは国内の販売店はたまったものではない。すでに当地の三菱自動車の販売店は本社が大阪に移ってしまい,近畿地方から九州地方まで1府8県をカバーする,販売エリアだけは巨大な企業になってしまっています。つまりそこまで広域化しないとやっていけないところまで追い込まれてしまっているというわけです(その反面,一つの県にいくつもの販売会社が存在している例もある)。

 日産は軽自動車のビジネスを進めるにあたり,これまでスズキ・三菱の両者と提携を結んでいたのですが,今後は三菱自動車との関係を深めることになり,共同で軽自動車を開発する会社を設立,そして昨日,日産のオッティ改めデイズと三菱の3代目となるekワゴンの外観デザインを公開しました。現行のオッティと異なり,デイズはいかにも日産らしいデザインで,これならそこそこ売れるのではないか,という予想ができます。しかしデイズの日産マークをスリーダイヤモンドに置き換えたekワゴンは,同じエクステリアデザインだというのに,そして発売前だというのにもう過去のクルマと言う感じが漂っています。おそらく実際に発売されても,圧倒的に日産マークのデイズが売れて,三菱マークのekワゴンは,ダイハツのブーン同様,忘れられてしまうのではないか,という印象があります。

 先日また,三菱自動車はリコール隠しではないか,と思われる事案が発生しました。優れた電気自動車をリリースしようが,優れたプラグインハイブリッド車をリリースしようが,燃費の優れたガソリン車をリリースしようが,もはや日本では,三菱自動車の居場所はないのではないかという気がします。ただやはり,腐っても財閥系の企業であるため,三菱自動車本体はそう簡単にはつぶれないのではないか,という印象もあります。
 今後の方向としては,現在三菱自動車を取り扱っている販売店はやがて淘汰が進み,体力のある販売店は日産の販売店に衣替えできるものの,そうでない販売店は撤退を余儀なくされるかも知れません。そして三菱自動車は日本市場をあきらめ,家電の領域で言えば船井電機やオリオン電機のような外需中心のメーカーになるのではないか,そんな予感があります。ただ今後,東南アジアやロシアはきっと,モータリゼーションの発達に伴い民族系のメーカーが力をつけてくるでしょうから,いつまでそれらの地域でも優位な立場にいられるかどうか,極めて疑問です。

 そう考えると,やはり足元の日本市場を見直し,リコール隠しをせずグループ企業内のための高級車も売らず,地に足のついた開発製造販売態勢を作り直すしかないような気がするのですが,このメーカーにそんなことを言ってもきっと聞いてはくれないのでしょうかねぇ。

 あ、忘れていました。コルトから現ミラージュまで振り返ると,まずは「国民車構想」にのっかって三菱500をリリースしたが売れず,工場ごとの独立性が強かったために別企画でファストバックの2ストロークカー,コルト800を出したものの全く売れず,三菱も一旦はこのクラスをあきらめます。
 ギャランから派生したランサーがヒットし,さらに時代の趨勢に乗りFF化したミラージュをリリース,斬新なデザインでそこそこヒットしますが,2代目では焦点のぼやけたデザインで失速(まだWikipediaの記述がおかしいです)。3代目はあからさまに他社デザインのぱくりでしたが2匹目のどじょうは存在しそこそこ売れました。
 4代目はミラージュというよりも僚車のランサーエボリューションが人気となり伝説化しました。この頃は三菱自動車も登り調子の時代だったのですが5代目ミラージュの頃になるとその勢いも失速,ディンゴという派生車にミラージュの名前を託し,本体はランサーに統合されます。
 そこに起きたのがリコール隠し騒動。GDIエンジンの不調もネットで騒がれるようになり,GDIエンジンを封印して登場したのがFFコルト。リリース当初はそこそこ売れたのですがやがて失速。ところが後継車を開発する余力もなく,だらだらと10年近くにわたり売られ続けます。
 期待のFFコルト後継は再びミラージュと名付けられ,タイ生産で燃費と価格が優れたものになっていたのですが,残念ながら消費者に省みられることなく,構造上ハイパフォーマンスバージョンも用意できないので,最悪の場合このままフェードアウト,という予感もあります。
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 というわけで,足かけ4年に渡った本連載も,本稿をもって終了となりました。ご愛読していただけたかどうかわかりませんが,ありがとうございました。
 新企画を温めているところ(今度はクルマねたではありません悪しからず)ではありますが,クラウンねた,Windows8ねたで狂乱状態だった本サイトのアクセス数も,最近ようやく,もとの弱小サイトレベルに戻ってしまったようでもありますし,ここらで定例の土曜更新をちょいとお休みしようと思います。
 土曜更新の再開は一応4月13日を予定していますが,気が変わってもう少々伸びるかも知れません。不定期の更新はするかも知れませんのでまたその時をお楽しみに…。

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コメント

 三菱自動車が軽自動車のekシリーズ以外にも燃費偽装をしていたことが明らかになり,国土交通省の測定の結果カタログ値より最大8.8%燃費が悪かったことが,2016年8月30日に公表されました。
 ミラージュは5.5%。現行の6代目ミラージュは一時燃費クラストップだった1000ccをやめ,全車1200ccに移行しています。燃費は25.4km/Lと公表されていましたが,その5.5%減となると24km/L強となり,マーチよりはカタログ上低燃費であるものの,デミオガソリン車やヴィッツ1300よりカタログ上燃費が悪くなる事態となりました。

 リリース時のミラージュ1000ccの燃費は27.2km/Lでしたが,この燃費が当時のクラストップと言えたかどうかは,疑問符がつく状況となっています。

投稿: くすぴー | 2016年8月31日 (水) 08時08分

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