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2012年5月12日 (土)

実は最大の危機が迫ってきているのではないか?

 現行の13代目クラウンが登場したのは平成20年2月のこと。先代12代目クラウンはモデル末期でも人気を保っていたように思うのですが,少し伸びてはいたものの,4年3カ月と,クラウンのモデルライフとしては常識的な期間でモデルチェンジされました。
 ボディは4ドアセダンで,全高とホイールベースは先代と変わりないものの,全長が3cm,全幅が1.5cm拡大され,先代よりも伸びやかなイメージを持つデザインとなりました。
 ラインナップとしては従来のロイヤルシリーズとアスリートシリーズ。ただし,Wikipediaによるとロイヤルシリーズは,「ロイヤルエクストラ」仕様が廃止されたため,正確には「ロイヤルサルーンシリーズ」と言うんだそうです。排気量はロイヤルサルーンシリーズが2500ccと3000cc,アスリートシリーズが2500ccと3500ccになっています。
 13代目クラウンの目玉はなんといっても同年春に追加された,本格的な「ハイブリッドシリーズ」でしょうか。クラウン・アスリートをベースに3500ccエンジンとモーターを組み合わせ,システム全体の出力として345psを誇っていました。しかも10・15モード燃費は当時の小型車並みの15.8km/lを記録していました。ただ,昔のセルシオ並みの600万円という価格が難点でしたが。

 「クラウンCMコレクション」に収録された13代目クラウンのCFは前期形まで引き続き松本晃彦さんの楽曲を使用。クラウン・アスリートの走りを訴えるものもありましたが,時代を反映して,子供のために美しい環境を残そうと訴えるクラウン・ハイブリッドや,運転中の安全を訴えるプリクラッシュセーフティ機能付きのクラウン・ロイヤルのCFなども作られていたようです。本DVDに収録された最後のクラウンのCFは,日本の寺と四季の風景とクラウンを織りまぜたものになっていて,過去何度もクラウンのCFの中で使われてきた情景を再現するものになっていました。

 なにしろ人気だった12代目のキープコンセプトで,割高ながら環境に配慮した本格的なハイブリッド車も登場したので,13代目のクラウンは12代目に引き続き順調に売れるのだろう,と当時の私は思っていました。事実13代目クラウンの滑り出しもそんなに悪くなかったのではないかと思います。

 ところが,13代目クラウンが登場した頃と言えば,アメリカでのサブプライムローン問題に端を発した景気減速と,新興国の旺盛な資源の需要に伴う原油価格の高騰により,ガソリンの価格が1リットルあたり200円近くにまで高騰するようになってしまいました。
 さらに自動車の販売台数も落ち込んだことから日本の自動車会社の経営を圧迫するようになりました。そこで当時の政権は,環境に優れたクルマに買い換えてもらうべく,減税と補助金で自動車の買い替え促進を図ろうとしました。特にハイブリッド車は購入時にかかる税金を免税とするなど,大きく優遇されました。
 この補助金システムには矛盾があり,同じ燃費でも重量の重いクルマの方が優遇されてしまうような仕組みになっていました。そこでメーカー各社は,装備品を多く取り付け重量を重くして,より補助金を多くもらえるようにした仕様を追加するという,なにがなんだかわからないようなことまでやってしまいます。

 この制度はクラウンにとって追い風かと思いきや,そうはならなかった。
 原油高騰が著しい中,平成21年初頭に,装備を省略した仕様で200万円を割る価格のハイブリッド車,2代目インサイトをリリース。次いでトヨタも,発売予定の3代目プリウスの価格を引き下げると発表して同年5月に発売開始。途中アメリカで発生した欠陥車騒動に巻き込まれますが,この3代目プリウスがまさしく「飛ぶように」売れたのでした。
 3代目プリウスはホンダの2代目インサイトや他社のアイドリングストップ機能がついた程度のエコカーを蹴散らし,不動の地位に立つことになるのですが,なんと返す刃で自社の非ハイブリッド車をも駆逐させてしまったのでした。下はカローラから上はクラウンまで,これらのトヨタ車を買おうとしていた人たちがこぞってプリウスを買ってしまったのですからたまったものではありません。

 かくして13代目クラウンは,デザインにもメカニズムにも大きな破綻はなかったはずなのに,自社のプリウスが原因で一転,不人気車になってしまったのでした。
 なおクラウン・ハイブリッドは平成22年にベース車がアスリートからロイヤルサルーンに変更され,より環境イメージを重視したものとしています。

 一方,クラウンの上級車,5代目マジェスタは平成21年に登場,ついに4600ccエンジンが載る(4WD車は4300cc)ようになったのですが,「…CMコレクション」に収録されたCFを見た時の印象は「あれ,こんな形だったっけ?」というのが正直なところでした。「レクサスのマークがついているのは嫌だ」というユーザを取り込むための企画,というのは分かるのですが,そんなことをしているからメルセデスやBMWに少しずつシェアを奪われているような気がしてしかたがありません。

 クラウンの車台を使った格下のマークXも平成21年秋に2代目となります。プリウス以外はほとんどの車種で売れ行きが落ち込んでいたこともあり,250万円を割る価格で購入できるモデルも追加されたのですが,このマークXも,どうも初代ほど売れてはいないように思います。マークXは,価格的にはもろにプリウスとぶつかってしまう車種なので,「それでもマークXを買おう」と思った人がトヨペット店に入って,気がついたらプリウスに決めてしまっていた,という人も相当数いるのではないかと想像します。

 タクシー向けのクラウン・コンフォートや官公庁向けの5ナンバークラウンセダンは依然として継続生産されていたのですが,13代目3ナンバークラウンが登場した直後にいわゆる「マイルドハイブリッド」仕様が廃止,クラウンファミリーから伝統の直列6気筒エンジン車が完全に消滅します。
 クラウン・コンフォートやクラウンセダンは燃料がLPGの4気筒エンジン車だけとなるのですが,平成20年夏,旧態依然としたOHVエンジンから,液体噴射式のハイメカツインカムエンジンに載せ替えられます。出力は実に113psに向上。ライバルのセドリックセダンはシングルカムエンジンでなんと85psしか発生しないため,力の差は歴然。たまたま乗車したタクシーの運転手さんに話を聞くと,クラウン・コンフォートの新エンジンはやっぱり出足が違うのだそうです。まさに21世紀の「神風タクシー」です。
 ところがこのクラウンセダンとクラウン・コンフォート(コンフォートも)は,翌平成21年,理由を明らかにせず突然生産が中止されます。そして翌々年の平成23年に生産が再開され,謎の生産中止状態は一応集束されました。クラウンセダンやクラウン・コンフォートが必要だった部署では,いったいこの間どうしていたのか,非常に気になるところです。

 そして平成24年,従来はクラウンベースだったレクサスGSが,(日本では)2代目モデルからついにクラウンベースを離れ,全く独立した車種となりました。トヨタは今後,2500cc~4000ccクラスにおいて,「クラウン」と「レクサスGS」という2つの車種を独立して作る,ということになるのでしょうか。
 もちろん,そのことにより「クラウン」を従来のトヨタ的価値観で作り,一方の「レクサスGS」をうんとスポーティに作ることができる,というメリットもあるでしょう。ただ,今度リリースされたレクサスGSを見るたびに,なんだか凝り固まっているというか,ゆとりが感じられないというか,了見が狭いというか,そんな印象を感じてしまうのです。
 そもそも日本で「レクサス」ブランドを立ち上げる必要があったのか。レクサスLSはセルシオのままでよかったのではないか。レクサスISはアルテッツアでもよかったのではないか。そしてレクサスGSを,日本では「クラウン」として売ればいいのではないか,という気がします。あくまでも日本の高級車という土台を持ちながら,それでも世界に羽ばたいていくようにしていかないと,日本のユーザにも世界のユーザにも理解してもらえないのではないか,という気がします。

 それでもトヨタは「落ち着いた内外装にむやみに大きくない車体が必要なユーザはまだまだ多い」ということから,クラウンが必要だというのでしょう。
 しかし,すでに日本では,メルセデスやBMWがじわじわとシェアを伸ばしている状況にあります。件の私の伯父ですが,実は10年前から,逆輸入のレクサスをやめてメルセデスのSクラスに乗り換えており,すでにそれも2代目に乗り換えているのです。もはや「いつかはクラウン」の時代ではなくなったのです。そのような状況にあるというのに,「クラウン」と「レクサスGS」の2系列に,それぞれ同じように渾身の力をかけるほどの余裕がトヨタにあるのか,というのが非常に気になる点です。

 最後になるのですが,正直なところ,実はクラウンは好きなクルマではありません。それは,クラウン自身がそう思わせているのではなく,日本のクラウンユーザの全てとは言わないのですが,車間距離を詰めてきたり割り込んだりするような運転をするような人が多いような気がするのです。高級車に乗っているプライド,というか,慢心がそうさせているのでしょうか。クラウンのブランドサイト(http://toyota.jp/T/crown/magazine/index.html)にさまざまな自動車評論家の人たちがクラウンのよさを紹介しているのですが,毎日クラウンをはじめとする高級車ユーザの横暴と戦っている一般ユーザからすると,「何を言っているんだか」という感想しか持てません。トヨタは,クラウンを真のブランドにするために,ユーザ教育をもっと徹底してやるべきだったと思います。

 ただ,13代目クラウンの(実力があるのに)体たらくぶりを見る限り,このクラウンも,プレミオという名前に変えさせられたコロナや,(日本では)専用車台を起こされなくなったカローラのように,ブランドの高齢化が進行し,本当は絶滅寸前なのではないか,という印象があります。
 次期クラウンの噂として,4気筒のハイブリッド車が登場する,という話が流れているようです。今やメルセデスのEクラスはターボがついているとはいえ1800cc4気筒という,先代カローラ並みの排気量のモデルがあるため,それなりのダウンサイジングを図る可能性もある(これによりレクサスGSとの棲み分けも図れるか)のですが,それだけで魅力ある次期クラウンが作れるのか,非常に不安なところです。よほど画期的な新機軸がない限り,14代目クラウンは順風満帆な船出とはいかないように思います。

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 長期にわたりご愛読ありがとうございました。前回の「スカイライン」よりも多くのアクセス数をいただいており,クラウンに関心を持たれる方が多いのだということが分かりました。

 というわけで「大衆車」シリーズに戻りたいのですが,携帯電話F-07Cのことがほとんど書けていませんので,しばらくの間F-07Cのことについて書かせて頂き,その後「大衆車」シリーズを再開しようと思います。期待している人は誰もいないと思うのですが,一応待ってやってください。

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