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2012年7月28日 (土)

直噴ガソリンエンジンの悲劇

 昭和44年末,それまでの古くさいボディから一新した,シャープなデザインのボディをまとった「コルト・ギャラン」が1500ccと1300ccの2本立てで発売され,人気を博します。
 ギャランは昭和48年にややボディが大型化した2代目となり,サーマルリアクターにより50年,次いで51年排出ガス規制に適合するのですが,大味なボディデザインで人気があまり高まりませんでした。
 そこで3年後の昭和51年,直線を強調した低く幅広いデザインを持つ「ギャラン・シグマ」を投入,再び人気車となり,昭和52年にはMCA-JET方式により53年排出ガス規制にも適合させました。
 3代目シグマの人気にあやかり,昭和55年に登場した4代目シグマは,デザインは先代を踏襲したままボディを拡大,55年末に投入した2000ccターボエンジン車はそれなりに注目されましたが,人気は長く続きませんでした。
 昭和58年に登場した5代目シグマはFF化し,「和製アウディ」と言ってもいいような空力ボディをまといました。2000ccSOHC12バルブながらグロス200psを発生するターボエンジン車が注目され,後に2代目デボネア用のV6エンジンも搭載されます。
 5代目シグマはV6エンジン車とタクシー仕様のみ残され,それ以外は昭和62年に6代目「ギャラン」に移行します。アクの強いデザインとなり,フルタイム4WD・4WS・2000ccDOHC16バルブターボエンジンを搭載した車種がイメージリーダーとなり,全体によく売れた車種でした。
 ところが平成4年登場の7代目ギャランではボディを3ナンバーサイズに大型化,さらに2000ccはV6エンジンに移行させてしまいます。実際の取りまわしはさほど難しくはないものの,同様に3ナンバー化したマツダ・クロノスやホンダ・アコード同様市場から拒否反応を受けてしまいます。マツダやホンダはあわてて次のモデルで5ナンバーに戻してしまうのですが,三菱は続く8代目も引き続き3ナンバーで行くことにします。

 平成8年に登場した8代目では当初エンジンを1800cc4気筒DOHCの1本に絞り,そのエンジンに,電子式噴射としては世界初のガソリン筒内直接噴射機構を採用します。このエンジンは"GDI"と呼ばれ,ギャランに搭載されたそれは,ネット150psという高出力を誇りながら,マニュアルシフト車で10・15モード燃費が18.8km/l,60km/h定地走行燃費が実に30.8km/lと,同社が昭和51年に発売した軽自動車「ミニカ5」に迫る,あるいは凌ぐ値になっていました。

 パワーと燃費を両立したGDIエンジンということで,当初はかなり注目され,日本カーオブザイヤーも受賞します。そしてこのGDIエンジンは,上はV8の「ディグニティ」から,下はミニカベースの限定市販車で1100ccの「ピスタチオ」までフルラインで採用されます。
 そんなGDIエンジンを搭載した「ミラージュディンゴ」は,5代目ミラージュの派生車として平成11年早々にリリースされます。ボディは5ドアの背が高いスモールワゴンの1本のみで,エンジンは1500ccのGDI。翌平成12年には非GDIの1300ccと1800ccGDIが追加されます。

 ミラージュディンゴをベースに全長とホイールベースを長くし,7人乗り化したミニバンがディオンです。平成12年早々に登場し,当初は2000ccのGDI,次いで1800ccのGDIターボが追加されます。徳大寺有恒さんの「間違いだらけのクルマ選び」ではこのディオンが絶賛され,特に2000ccのエンジンがFF(シリウスエンジン)と4WD(8代目ギャランにも搭載された系列)で別になっており,4WD版はロングストロークになっていて理に適っている,と評されていました。ところが後のマイナーチェンジで全車4WDと同じエンジンになってしまいます。

 ミラージュディンゴは縦目のアクが強いフロントマスクで,私はあまり好きなデザインではなかったのですが,特徴的と言えば確かにそうだったと思います。その特徴的なフロントマスクを平成13年のマイナーチェンジでやめてしまい,ミラージュディンゴから特徴的な部分がなくなってしまいます。

 そしてGDIエンジンの未来にも暗雲がたちこめます。現在web上でGDIエンジンについて調べると,あまりよいことが書かれていません。中にはメーカーの盛衰にも関わる重要な記述も見られるのですが,メーカー自身,あるいは,大手マスコミの情報ではそのような記述が見られないため,GDI車を所有したことがない私はこれ以上これらの情報について真偽を確認する術がありません。
 ただはっきりしていることは,三菱自動車が現在,GDIエンジンを搭載した車種を一切出していないことです。三菱のGDIはリーンバーンで燃焼させるため,直噴でない他社のリーンバーンエンジン車同様,窒素酸化物が出やすくなっており,平成17年の新しい排出ガス規制に対応できない,というのが表向きの理由のようですが,他社ではストイキバーンによる直噴エンジンを出し,現在ではヨーロッパのメーカーや日本でもマツダではこの直噴ガソリンエンジンを「経済性が優れている」点で売りにしているため,「公害対策」だけが理由でGDIエンジンをやめた,とは本当のところ考えにくいです。
 "GDI" のバッジがついていたり,リアに"GDI CLUB"のステッカーが貼ってあったりする車も最近ではあまり見かけなくなりました。実は私の知人にGDIエンジンを搭載している車に長く乗っておられる方がいて,その人に車の様子を尋ねると,特におかしなところはなく,メンテナンスもそんなに気をつかっていない,ということでした。現在でも特に問題なくGDIエンジン車に乗られている人が何人もおられるのは事実ですが,GDIエンジンが搭載された車を最近見る機会が少なくなったのもまた事実です。

 それよりも,三菱自動車では平成12年夏にクレーム隠し事件が発覚,それが原因で三菱自動車製のクルマの売れ行きが大幅に減少します。
 平成12年に4ドアセダンが「ランサー」に1本化されたため,派生車としてミラージュの名前をとどめたディンゴは,三菱自動車の内部事情に振り回され,デザインはともかく,いいクルマだったのか悪いクルマだったのかよく分からないまま,平成14年夏に生産終了となり,三菱自動車にとってこのクラスが数カ月ほど空白状態となります。
 実は最近,このディンゴが駐車場に止まっているところを見かけたのですが,ボディスタイルはともかく,商用車かと言わんばかりのお粗末なリアシートがついており,やはり目に見えるところでコストダウンを図ったことが不振の原因だったのだろうかと感じました。
 なお僚車ディオンもあまりに古くさいデザインだったこともあり人気が高まらず,後継のないまま平成18年春に販売終了となりました。

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