パイオニアCT-770(2)・3分割のスゴい奴
私は1980年代からオーディオ機器に興味を持ち始めたので,1970年代のオーディオのことはよく知りません。ですが
http://audio-heritage.jp/ のページや,
http://www.niji.or.jp/home/k-nisi/ のページのおかげでかなり古い時代のオーディオ機器の情報まで居ながらにして得ることができるようになりました(ありがとうございます)。
CT-770に至るまでのパイオニアのカセットデッキの流れを見てみると,70年代前半は,他社も出していたような,カセットレコーダーのようにテープを寝かせてセットするタイプのデッキを出していて,次いで70年代後半にいわゆるコンポーネントタイプのカセットデッキに転換しています。当初はコンポーネントタイプでありながらテープを斜めに寝かせるような感じでセットするようになっていましたが,やがてビクターのKD-A150のような正立ホールドタイプのダイレクトローディング方式のデッキをリリースするようになりました。
1978年にメタルテープが登場したため,パイオニアでは翌1979年,非メタル対応のデッキを出したあと,マイナーチェンジですぐにメタル対応のデッキを出すという,少々混乱した対応をしてしまいました。
メタル対応が一段落した1980年,高さ約22cm,重量18kg,価格23万円もする超弩級のカセットデッキ,CT-A1をリリースします。戦前に東北大学で発明された鉄・ケイ素・アルミの合金であるセンダストをリボンのように薄い帯のように加工し,それを積層させたパイオニア独自の「リボンセンダスト」を採用した3ヘッドを初めて搭載していました。
加えて,マイコンを使ってテープ1本1本のバイアス・録音感度・イコライザーを調整する「AutoBLE」という機能を搭載していました。本機では9種類の調整値をメモリーでき,録音時にいちいち設定する必要がなかったようです。
テープ駆動部はクォーツDDモーターによるクローズドループデュアルキャプスタン方式で,ワウ・フラッターは0.03%を達成していました。
このCT-A1の技術をコンポーネントタイプに凝縮したものが"ALL DAY COMPO"シリーズのCT-770と,その上級機の,
http://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/player/ct-970.html
http://knisi2001.web.fc2.com/ct-970.htm
CT-970ということになるわけです。
2機種に共通して搭載されたのが例の3分割のパネルデザイン,リボンセンダストによる3ヘッド,クローズドループデュアルキャプスタン,そしてAutoBLE機能でした。
リボンセンダストヘッドは録音・再生ヘッドが別になったコンビネーションタイプのものになっていました。数値的には高域までよく伸びる周波数特性となっており,ノーマルテープでは20kHzまで,メタルテープとハイポジションテープではCT-770とCT-970でチューンが変わっていたのか,CT-770では21kHzまで伸びたのに対し,CT-970では22kHzまで伸びていました。
クローズドループデュアルキャプスタンの中身もこの2機種で異なっていて,CT-770はダイレクトドライブ式でないクローズドループ方式でそれでもワウ・フラッターは0.035%,CT-970はクォーツDD方式でCT-A1よりも向上した0.023%を達成していました。
なおデュアルキャプスタン方式のため消去ヘッドは小窓用の小さいものになっていました。
AutoBLEはCT-A1の6ビットマイコンより簡略化された4ビットマイコンを採用,メモリー機能もないので,AutoBLEを使いたければ毎回録音前にセットする必要がありました(私は使わなかったのですが,タイマー録音時にも働きません)。
AutoBLEのボタンを押すと,パネルの"BLE SEARCH"ランプが点灯・"AUTO DATA"ランプがゆっくり点滅し,テープが録音再生状態となり,1kHzの発振音が流れて(厳密には録音感度を軽く調整した後)まず録音バイアスを調整します。発振音が大きくなったり小さくなったりしながら最適バイアス値を探し出し,次いで"AUTO DATA"ランプの点灯が少し早くなって録音感度を調整。それが終了すると発振音が10kHzに変わり"AUTO DATA"ランプがもっと早く点灯して録音イコライザーを調整します。
全ての調整が終わるまで約10秒。設定が終了すると録音再生状態を停止し,テープがAutoBLEの開始時点まで戻って終了ということになります。別のテープで録音したいときはAutoBLEボタンの下にあるCLEARボタンを押して設定値を消します。
なおAutoBLE使用中の周波数特性は,取扱説明書によるとなぜか16kHzで頭打ちになっていました。テープに最適な状態になっているのになぜ広域がカットされてしまうのか不思議でしたが,私は毎回AutoBLEを使って録音していました。
あ,今の時点ではまだ購入前の状況でしたね。今のような話をもっと簡単に店の人から聞きました。その間別の店員は,もう少々お金がありそうな,私と同年配の子どもがいる家族に,同じく3万円引きで(だからそれでも8万円台のプライスタグがついていた)CT-970の話を聞いているようでした。
だいたい予算的にも5万円くらいを考えていたので,このCT-770を買ってもらうことになりました。確か支払いはボーナス一括払いにしてもらったような気がします。(この項さらに続く)
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