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2014年2月23日 (日)

パイオニアCT-780(4)・本当はヘッドの話。だけどどうしてもイジェクトが…。

 パイオニア・CT-780の4回目。今回はカセットドアを開けてみてヘッドまわりを見てみます。
 そのカセットドアなのですが,何回もご紹介の通り,安いラジカセのように固い操作感のイジェクトボタンを押すと「バタンッ」とドアが開きます。
 今,数年前に購入したソニーのラジカセのイジェクトボタンで試してみたのですが,いやいや昨今の安いラジカセでもこんなに「バタンッ」とは開きません。バネでダンプを利かせているのか,少々ゆっくり開いてくれます。CT-780はそのレベルにすら達していません。問題なのは,このイジェクト操作感は,上級機のCT-980でも同じということです。
 当時カセットデッキで一般的だったのはエアダンプ,もしくはオイルダンプにより,イジェクトボタンを押すとじわ~っとドアが開くタイプのもので,これがCT-970/770になるとモータードライブのパワーイジェクトとなり,イジェクトキーをぽん,と押すとモーターの音がしてイジェクトされるようになり,A&DのGX-Z5000になると,モーターの音が静かになり,しかもパワーローディングまでされるようになったのです。
 今回は,あくまでもこの手動で機械的なイジェクトを楽しんでみたかったので個人的には満足しているのですが,これが30年少し前,なけなしの金をはたいてCT-780を購入し,ラックにセットして,さぁ聞いてみるぞとイジェクトボタンを押したときに,「バタンッ」とドアが開くとき,ユーザーは一体どんな気分になっただろうかと,考えずにはいられません。30年前なら,私は「CT-770の方がよかった」と思うかも知れません。

 それはともかく,ドアの内部を見てみます。

Dsc04597

 回転式の録音・再生ヘッドはリボンセンダストとなっています。2ヘッドタイプのリボンセンダストヘッドはこれが初めてで,CT-580にも搭載されています。なおCT-480のヘッドはハードパーマロイでした。リバース機のためキャプスタンが2本装備されており,そのため消去ヘッドは3ヘッド機に装着されているものと同じ,小窓用の特殊合金ヘッドが採用されており,CT-780は録再リバース機のため2つ装着されています。

 初の録再タイプのリボンセンダストヘッドですが,カタログによると周波数特性は,全て低域が30Hzから,高域はそれぞれ,

・ノーマルテープ    -20dB録音 16,000Hz  0dB録音  9,000Hz
・ハイポジションテープ -20dB録音 17,000Hz  0dB録音 10,000Hz
・メタルテープ     -20dB録音 17,500Hz  0dB録音 15,000Hz

までとなっていました。これが3ヘッド機のCT-980/880なら,低域は25Hzから,高域はそれぞれ,

・ノーマルテープ    -20dB録音 17,000Hz  0dB録音 10,000Hz
・ハイポジションテープ -20dB録音 19,000Hz  0dB録音 11,000Hz
・メタルテープ     -20dB録音 20,000Hz  0dB録音 16,000Hz

とより広がっていました。ただ,同じヘッドを使っているはずのCT-970の,メタルテープ-20dB録音時の周波数特性が20~22,000Hz(CT-770は20~21,000Hz)であり,これは回路に何か変更があった,というよりはパイオニア社内の測定方法に何か変更があったのでしょうかね。

 実際に再生音を聞いてみた限りは,CT-770/970と同じ傾向の音で,もともとリボンセンダストヘッドの再生音に慣れていた私には安心して聞ける音,という印象があります。ただ,同じテープをCT-970と変えながら聞いてみると,高域の伸びがCT-780では少々足りないかなぁという印象がありました。
 あとはCT-780のほうが少々出力レベルが小さいかなぁ,という印象もあるのですが,なにしろ30年前に作られた機械のこともあり,経年変化の影響もあるのかも知れません。もちろんふだんテープをかけて聴く分には特に問題はないので,CT-970の寿命を少しでも伸ばすために,テープを聞きたいときはCT-780を使うようにしています。

 なおハードパーマロイヘッドのCT-480だと,周波数特性は低域は30Hzから,高域はそれぞれ,

・ノーマルテープ    -20dB録音 15,000Hz  0dB録音  8,000Hz
・ハイポジションテープ -20dB録音 16,000Hz  0dB録音  8,000Hz
・メタルテープ     -20dB録音 17,000Hz  0dB録音 12,500Hz

までとなっていました。

 そしてSN比は,それぞれノイズリダクションオフで,CT-780と580がEIAJ55dB,第3次高調波歪率3%時が59dB以上となっていました。それらよりCT-480だと-1dB,CT-980/880だと+1dBになっていました(ドルビーを入れたときは,5kHz時にドルビーBで+10dB,ドルビーCで+20dB向上)。

 駆動系のことを書こうとしたらもういっぱいいっぱいになってしまったので,それは次回に。

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2014年2月 1日 (土)

パイオニアCT-780(1)・ボロさ加減を確かめたかった…。

 気がついたら久しくブログに何も書いていませんでした。
 「webページの更新を頑張ります」と言いながらそっちの方も手つかずです。
 しょうがないから,長らく温めていたねたをここで放出することにします。

Dsc04594

 はい,CT-970に続いて,わずか3000円で購入してしまった,パイオニアのカセットデッキ,CT-780です。
 CT-770を型遅れは了解済みで購入した32年と少し前,パイオニア・カセットデッキのモデルチェンジに気がつき,ドルビーCノイズリダクション搭載で少々落胆した,というのは以前に書きました。

 ところがこのパイオニア・ALL DAYS COMPOの第2世代カセットデッキシリーズは,最上級機のCT-980以外,情報がほとんどweb上にありません。以前にも書いたのですが次のようなラインナップでした。

・CT-980…リボンセンダスト3ヘッド搭載クォーツPLL・3DD再生リバース機
・CT-880…リボンセンダスト3ヘッド搭載・3DD再生リバース機
・CT-780…リボンセンダスト2ヘッド搭載・3DD録音・再生リバース機
・CT-580…リボンセンダスト2ヘッド搭載・3DD再生リバース機
・CT-480…パーマロイヘッド搭載・1モーターワンウェイ機
(CT-680という機種はなかった…)

 当時の価格は上から順に,109,800円,99,800円,74,800円,64,800円,54,800円でした。
 ALL DAYS COMPO第1世代カセットデッキと比較すると,リボンセンダスト3ヘッド搭載クォーツPLL・DDワンウェイ機のCT-970の後継がCT-980で,オートリバース搭載ながら価格は値下げとなっていました。
 (リボンではない)センダスト2ヘッド搭載・2モーターワンウェイ機で3分割デザインではなかったCT-570の後継が,再生リバースを搭載したCT-580で,価格は1万円アップとなりました。
 パーマロイヘッド搭載・1モーターワンウェイ機であったCT-470の後継がCT-480だとすると価格は1万1千円のアップとなっていました。価格的にはCT-570とCT-480がまったく同じで,CT-480がドルビーC搭載だというのを除けばそうとうなグレードダウンになってしまっていました。

 そして,リボンセンダスト3ヘッド搭載・2モーターワンウェイ機のCT-770はというと,価格・型番の面と機能の面で後継機が2つに分かれてしまったなぁ,と当時も思いました。
 型番・価格の面から見た後継が今回登場のCT-780で,価格は5000円のダウン。シリーズ中唯一の録再オートリバース,ドルビーC搭載,上級機にひけをとらない各種のテーププレイ機能が加わったのですが,3ヘッドやデュアルキャプスタン(リバース用に2本キャプスタンは備わっているが),オートBLEの搭載が見送られ,筐体の高さの関係かレベルメーターのセグメント数も減り,機能的には見劣りがしたものでした。
 機能の面から見た後継がCT-880。こちらはCT-770同様リボンセンダスト3ヘッドにオートBLEが搭載され,デュアルキャプスタンではないもののワウ・フラッター値がCT-770と同じ0.035%で,しかも再生リバース,ドルビーC,各種テーププレイ機能もついたのですが,価格がCT-770の2万円増しと,大幅にアップしてしまったのでした。

 CT-770を購入してもらったばかりの私は当然,当時この第2世代機を購入することはなかったのですが,気になるモデルではありました。
 もちろんさまざまなテーププレイ機能に,ドルビーCノイズリダクション搭載というのが一番気になったのですが,実機を触ってみて,下級機から上級機に至るまで,イジェクトボタンがラジカセのような機械式で,CT-970やCT-770のようなモーター駆動のパワーイジェクトはおろか,当時一般的だったエアダンプも搭載されず,どうしてこのような露骨なコストダウンが図られてしまったのか,非常に興味があったのでした。

 パイオニアはこの世代のカセットデッキの後,一旦CT-970/770の路線に戻り,オーソドックスなデザインを与え高級かつ高性能なCT-A9をリリースし,今でも名機だと言われています。オートリバース機もモデルチェンジしたのですが主流にはせず,まさにCT-980~480の路線が否定された感じになってしまいました。

 そういう意味でも気になったモデル。CT-980や880よりも,CT-780,いや580でも480でもよい,とにかく1台所有してみて,そのボロさ加減を味わってみたい,というのがありました。
 ちょうどよいところにオークションでCT-780の出物があり,落札後,「正常に動作しないので入金を控えてほしい」と言われたものの,「ボロさ加減を確かめたい」気持ちが抑えきれず,「現状のまま送ってください」,と言ってしまったのでした…。(以下次回)

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