トヨタの壮大な試みは失敗に終わる
| そして平成24年,従来はクラウンベースだったレクサスGSが,(日本では)2代目モデルからついにクラウンベースを離れ,全く独立した車種となりました。トヨタは今後,2500cc~4000ccクラスにおいて,「クラウン」と「レクサスGS」という2つの車種を独立して作る,ということになるのでしょうか。
(ここより)
そのレクサスGSがとうとうこの夏で製造終了するのだとか。
メルセデスでいうとEクラス,BMWでいうと5シリーズにあたるクラスは,以前からどのメーカーも力を入れて開発しているところですが,昨今のSUVブームのおかげでなかなか難しいところにあるクラスでもありました。
このクラスに,メルセデスもBMWもやらなかった,2車種同時展開というのをトヨタはやってのけようとしたわけです。もっともクラウンは国内向け,レクサスGSは海外向けという作り分けをしていたのですが,現行のレクサスGSは,それまで同じプラットホームで作っていたところを,8年前の上記記事にも書いた通り別のプラットホームで作るようになったのでした。
8年続いたその試みは,やっぱり失敗に終わってしまった,ということになりました。
もっとも8年前の記事で取り上げた13代目クラウン,そしていわゆる「ピンククラウン」であった先代14代目クラウンは,いわゆる「ゼロクラウン」と呼ばれた12代目クラウンを手直しを続けて作られ売られたものであり,トヨタにしてみれば開発費が非常に抑えられたはずなので,その分レクサスGSを専用設計にできる余裕があったのでしょう。
そのレクサスGSは残念ながら国内では,いや海外でもあまり売れることがなかったらしく,前述の通り世界的なSUVブームでもあり新型レクサスGSをリリースしても大幅な売れ行きが見込めないことから,日本で唯一体力のある自動車メーカーであるトヨタでさえ,大鉈をふるわざるを得なかったのでしょう。
とはいうものの。
今トヨタを「体力のある自動車メーカー」と書いたのですが本当にそうなのか。
新たなプラットホームを起こされた現行の15代目クラウン。リリース当初は確かに売れ行きがよく野火が広がるかのごとく売れたのですが,ある時期からその増え方が一段落したような気がする。
これまたリリース直後には太鼓持ちの評論家から絶賛された12代目カローラ。自販連の統計でも売れているような数字が見られたが,その数字ほどには,当地ではどうもあまり姿を見ない。「あこれが新型カローラか」と思ったら,1年前から先行発売されているカローラスポーツだったこともある。12代目カローラよりも,「売れていない」と言われているはずのマツダ3の方を多く見かけるような気がする。
ヴィッツ改めヤリス(日本では語感が悪かったため「ヴィッツ」にしたんじゃなかったかしら…)も自動車評論家の間では絶賛だが,私が日頃クルマをボーっと運転しているのが悪いのか当地では走っているヤリスを1台も見かけない。これまた4代目のホンダ・フィットの方をよく見かける。
自動車評論家たちはトヨタに忖度でもしているのかトヨタの悪口はほとんど書かれることはないのだが,本当はトヨタは,結構危機的な状況にあるのではないかなぁ,という気がしています。
話がそれてしまいましたが。レクサスGSをなくすのはいいけれど,トヨタにとって国際的にこのままで本当によいのか。「ニュル(ブルクリンク)で鍛えた」というのなら,いっそのこと15代目クラウンを世界に問うてみればよいのに,とも思います。
寸法(mm)を比べてみると,
(1) 2代目レクサスGS
(2) 15代目クラウン
(3) 現行メルセデスEクラス
(4) 現行BMW5シリーズ
(5) 13代目スカイライン
(1) (2) (3) (4) (5)
全長 4880 4910 4930 4945 4810
全幅 1840 1800 1850 1870 1820
全高 1455 1455 1455 1480 1440
WB 2850 2920 2940 2975 2850
2代目GSとスカイラインは前時代のモデルなので全長とホイールベースがやや短くなっています。クラウンは「日本国内での扱いやすさ」を売りにしているので全幅がやや狭い(それでも1800mmもあるのだから,「BMW 5シリーズより7cmもスリム」と言われても,もはやそんなに違いはないような気もする)ですが,全長とホイールベースはもはやEクラスや5シリーズとそんなに違わない。これをチューンして「新レクサスGS」として売ってもよいし,従来からある欧米のトヨタの販売店で売ってしまっても構わない。
でもトヨタはクラウンを世界に問わないのだろうなと思います。クラウンには「失敗」は許されないのだろうから。でもそこがトヨタが世界の自動車メーカーの中でいま一つ一流になりきれない原因なのだろうかと思うのです。
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