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2020年11月14日 (土)

拙い予想が当たってしまった…

https://www.chunichi.co.jp/article/152179
(会員以外はリード部分しか読めません)

 事実とすれば,手前味噌ですが8年前に下した予想が当たってしまいました(爆)。

 「クラウンセダン廃止」について書く前に,今一度現行の15代目クラウンについておさらいしておきましょうか。「ニュル(ブルクリンク)で鍛えた」という"TNGA"(どうしてもこの名称,「あの」商品を連想して印象はあまりよくないのですが…トヨタ社内で議論にものぼらなかったのでしょうか…)シャーシを採用し,歴代で一番,「走り」を売りにしたクラウンとなりました。
 パワートレインは下から,2000cc4気筒直噴DOHCのターボで245ps,売れ筋が2500cc4気筒直噴DOHCエンジンを持つハイブリッド車でシステム出力が226ps,先代までの「マジェスタ」の受け皿となる3500ccV6直噴DOHCエンジンを持つハイブリッド車でシステム出力が359psとなっていました。サスペンションは新たに前後ともマルチリンク式としたので,先代までのコンポーネントはほとんど使っていない,ということが分かります。
 ここまで聞けば,「売れないわけがない」と太鼓判を押したくなるところなのですが,ボディのデザインがなんと6ライトの「尻下がり」。これが日産のクルマだったら絶対売れないところです。真横から見ると,4ドアセダンというよりもヨーロッパ式の「5ドアハッチバック」といったところで,このクラウンが売れるのなら3代目コロナの5ドアハッチバックはもっと売れてもよかったはずで,トヨタはその後も,6代目・8代目・9代目・10代目のコロナや5代目のカローラ,スプリンター,初代ビスタなどでこの手のデザインを手がけているのに,それらが全部討ち死にしてしまった事実を忘れてしまったのだろうか,ということを思ったものでした。
 果たして,15代目クラウンは太鼓持ちの自動車評論家に絶賛され,リリース当初は確かによく売れていたかのように思うのですが,当時から「ある程度行き渡ったら,ぱたっと売れ行きが止まる」という印象があり,結局2020年の今,本当にそうなってしまったということになるのでしょうか。

 「クラウンセダン廃止」というリリースは,トヨタからは正式に出ていないので,「クラウンの名前を持つSUV車を出す」ことが本当にそうなのかどうなのかについては定かではありません。確かにトヨタのSUV車は時流に乗り,新型ハリアーやダイハツ製のライズ(って言うんだ)を筆頭によく売れているけれど,2代目RAV4の頃に当時のSUVブームが終息し,売れ行きがぱたっ,と止まってしまった事実を思い出すと,「クラウンクロス」がリリースされる頃にはSUVブームも終わってしまって,そのまま「クラウン」という名前がフェードアウトしてしまうのでは…ということを,トヨタは想像しないのでしょうか?

 同じようなデザインを持つ,(セルシオ時代を含めると)5代目レクサスLSも全く売れていません(リリース直後に弁護士さんがこのクルマで暴走死亡事故を起こしてしまったことも国内での不人気の原因のひとつかも知れない)。
 一度トヨタは5代目レクサスLSや15代目クラウンの不出来について,きちんと総括した方がいいかも知れません。いや,トヨタにきちんと総括してほしいクルマは他にもあります。

・必要以上に高価格にしてしまい,地方公共団体が購入すると批判の嵐となった3代目センチュリー。
・ユニバーサルデザイン導入と言いながら,スロープの出し入れが困難で車椅子での乗降が難しかったジャパンタクシー。
・ハイブリッド車の排気量がクラウンやカムリの2500cc,プリウスやカローラの1800cc,アクアやヤリスの1500ccと,どれも大きめで,本当にそんな大きなエンジンでないとハイブリッド車は成立しないのか。

 そして,最近のトヨタで気になるのが,統計で見ればトヨタのクルマは確かに非常によく売れているけれど,確かに最近新型ヤリスはそこそこ見かけるようになったけれど,昔のトヨタ車のように,「野火のように売れる」感じがしなくなった,ということです。ひょっとすると,販売系列統合の影響で,特に当地のようにトヨタ販売店の合併・統合が進んでいない地域では,見かけの実績を上げよう(実績を上げることでトヨタから有利な条件で新車を回してもらえる)と,軽自動車のように「自社登録」してしまっているケースが多々あるのではないか,という疑いも持っています。

 しかし,今のトヨタはプライドが高いので,さまざまな「不出来」の総括は絶対にしないでしょう。そもそも前述の通り,今のトヨタ車に対し多くの自動車評論家は,みんなトヨタの太鼓持ちになってしまったかの状況で,徳大寺有恒さん亡き後一応自動車評論家界の重鎮に納まった某K氏は,必要以上にトヨタ車を持ち上げ,必要以上にトヨタ以外の国内メーカーを攻撃するのが気になります。
 そもそも最近のトヨタは,
https://toyotatimes.jp/insidetoyota/081.html
のように,極端に言えば「自社にとって都合の悪いことを報道するな」,と公言する始末(「そうだマスコミが悪いのだ」と同調する一般の意見もあるようだが,単純にトヨタに同調するのは底が浅いような気がする)で,そんな社内の雰囲気では5代目レクサスLSや15代目クラウンの不出来について,自由に発言するのも難しいのではないかと想像します。

 クラウンセダン廃止の話に戻すと,クラウンと同クラスなのはメルセデスベンツのEクラスや,BMWの5シリーズがあてはまると思うのですが,それらのメーカーはEクラスや5シリーズをきちんと作っているからこそいろいろな派生車種が作れているのだと思います。トヨタは,「それは"TNGA"が担っている」と言いたいところなのでしょうが,やはり「クラウンのセダン」という,きちんと形のあるものをひとつ作っておかないと,クラウンクロスの開発は難しいような気がします。
 全幅が1800mmを超えてもいいではないですか。国際的にも通用する「クラウンセダン」を,まずは作ってみてはどうですか。世界から,メルセデスベンツでもなく,BMWでもなく,さすがはトヨタだ,と言われたくはないですか。マスコミから批判されてもそれを恐れることなく,いいクルマを作るために,社内を自由闊達な雰囲気にしてみませんか。

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コメント

私の言いたいことを簡潔に全部言ってくださっています。
こういう自動車評論家が日本にはいなくなってしまいました…。
https://biz-journal.jp/2020/12/post_196760.html

投稿: くすぴー | 2020年12月29日 (火) 21時22分

1月23日号の「週刊現代」(講談社)にも次のような記事が掲載されていますね。
"豊田章男社長が「教祖」になっちゃった"
拙ブログはトヨタ社社内の状況は知ったこっちゃないのですが,やはり社内には「モノが自由に言えない雰囲気」が充満しているらしいですね。

投稿: くすぴー | 2021年1月17日 (日) 18時10分

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