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2021年4月 4日 (日)

A&D GX-Z5000(4)・ダイレクトドライブキャプスタンによる高精度なテープトランスポート機能。

 GX-Z5000の4回目はデッキの右側にある各種操作ボタンの紹介です。本機はテープ操作のキーが全て右側に,ゆったりと配置されているので,左手でテープローディング,右手で機器の操作と非常に使い勝手がよい印象がありました。

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「右手系」といえばビクターのカセットデッキが元祖なのですが,確かにテープトランスポート部の下側にガチャメカボタンを配置しなければならなかった(実家のKD-A150なんかがそう)時代には説得力がありましたが,ロジックコントロールが導入されテープ操作のキーをどこに配置してもよいようになると,結局ビクターのデッキも,右側に配置したテープトランスポート部のさらに右側にテープ操作のキーを配置しなければならなくなってしまい,かえってごちゃごちゃした印象があったものでした。

 最上部の機能キーはあとで説明することにして,まずは基本的なテープ操作キーの配置について。上段には巻き戻し,再生,早送りのキーを,下段には録音/ポーズ,停止/イジェクト,オートレックミュートのキーが並んでいます。
 そうです。本機にはいわゆる通常の「ポーズ」ボタンがありません。というか,実は本機の「停止」にあたる動作モードの時は他機の「ポーズ」にあたる動作をしているのです。
 本機の場合,オートローディングにてテープを挿入すると,ヘッドブロックが上昇して待機状態となる仕組みになっていました。他機ならばこれが「ポーズ」状態であるところなのですが,本機はこれで「ストップ」状態です。これにより再生時の立ち上がりが早く,後述する選曲機能もスピーディに動作できました。操作性は非常によいのですが永年使うとこのヘッドブロック上昇の仕組みが仇となる事態も生じるのですがそれは後述します。

 録音操作は録音/ポーズキーと再生キーを同時に押して開始,録音を一時停止するときは録音/ポーズキーを押し,再開するときは再生キーを押す仕組みとなっています。レックミュートは自動式で,4秒のブランクを空けて自動的にポーズがかかる仕組みです(手動式のレックミュート動作も可)。もっとも本機を購入した頃はすでにFMエアチェックの習慣がなくなっており,後に購入したCLDプレーヤー・パイオニアCLD-100と組み合わせてCDをまるごとテープに録音する使い方ばかりだったので,レックミュートを使ったことはほとんどありません。

 キャプスタンダイレクトドライブに加え立ち上がりの速い動作システムを採用していることにより,高精度なテープ再生・編集を行うことも可能になっていました。その操作は,最上段にある4つのキーのうち,一番左のカウンターリセットの次にある,IPSS,A←→Bメモリーとレックキャンセルの2つのエディットキーにより行われます。
 IPSSというのは,インスタント・プログラム・サーチング・システムの略で,飛び越し選曲ができます。先にIPSSキーを押し,次いで早送りキーや巻き戻しキーを押すことにより前後16曲までの選曲ができる仕組みです。
 次にA←→Bメモリーキーを使ったリピート再生機能。本機には前述の通りカウンターメモリー機能はないのですが,リピート再生を始めたいところでこのA←→Bメモリーキーを押し,リピート再生を終えたいところでもう一度A←→Bメモリーキーを押し,巻き戻しキーを押すと,そこからストップキーを押すまでは何度でもリピート再生ができる仕様になっています。
 私はほとんど使わなかったのですが,巻き戻しキーと再生キーを同時に押して,オートリワインドプレイすることもできたようです。

 A←→Bメモリーキーは録音時にも同様の操作をし,最後にレックキャンセルキーを押すと,不要部分を消去できる「スポットイレース」の操作をするときにも使います。この機能で消去したときにはテープを巻き戻して操作前のテープ位置に戻るところまでしてくれます。さらに細かい範囲を消去するために,再生ボタンを長押しして1/2倍のスロー再生機能を使うこともできるようになっています。ダイレクトドライブキャプスタン機でないとこれはなかなかできない機能だと思います。
 レックキャンセルキーは録音全体をやり直す時にも使え,テープが元の位置に戻ったらさらにオートレックミュートで4秒間のブランクを作るようにもなっています。
 これらの機能は比較的地味で,私もほとんど使わなかったりしたていたのですが,まさしく本機の精巧なテープトランスポート機構により実現したものだと思います。これにより,おおまかなテープ走行時間しか表示できない貧弱なテープカウンター機能を補って余りあるものになっています。

 操作部の一番下はノイズリダクションの操作部になっています。本機はドルビーCノイズリダクションと,ドルビーHX PROが搭載されています。ドルビーCはそれまで所有していたパイオニアのCT-770がドルビーBまでの搭載にとどまっており,その後昭和57年にはドルビーCを搭載したカセットデッキが多数発売され当時は臍をかんだものでした。
 ドルビーBがヒスノイズの目立ちやすい高域を中心に最大10dBのSN比改善効果を持っていたのに対し,ドルビーCは中音域でもSN比の改善が図られており,最大20dB改善されたといいます。
 自分にとっては,1981年に登場してから8年後にようやく入手できたドルビーCデッキ,ということになります。ところがドルビーCノイズリダクションは,カセットデッキは超低価格機を除きほとんどの機種に採用されたものの,ラジカセやヘッドホンステレオ,カーオーディオにはほとんど普及が進まず,互換性を考えると結局ドルビーBまでしか使えなかったような印象があります。

 アカイはより強力なノイズリダクション機構であったdbxのライセンスを持っていたはずで,dbx搭載のカセットデッキもいくつかリリースしていたはずなのですが,本機の上級機であったGX-Z9000が最終で,その次世代機のGX-Z9100以降はdbx搭載モデルはリリースされませんでした。
 dbxは録音時にダイナミックレンジの圧縮を一律に行い,再生時には一律に伸長させる仕組みのため,ダイナミックレンジやSN比を大きく改善できたので,デジタルオーディオ時代に欠かせない技術と見られたのですが,(私はdbxを使ったこともそれを使って録音したテープも聴いたことがないのでなんとも言えないが),その後デジタルオーディオが進化してくると,ノイズレベルが変化しやすいdbxの欠点が逆に露になってしまったのかも知れません。

 その後各社のカセットデッキに搭載されたのが「ドルビーHX PRO」という,ノイズリダクションではなく,高域特性を改善するシステムでした。HXというのは,ヘッドルームエクステンションといい,飽和レベルを拡大するという意味なのだそうです。高域の録音信号が入った場合に録音バイアスを標準より少なくし,飽和特性を改善させることにより,例えばノーマルテープでも高域の特性が改善されるということになり,CDを録音するときの音質劣化を抑えることができるというわけです。
 以前パイオニアにも,CT-970/770の僚機であった別デザインの"CT-570"には,「ドルビーHX」が搭載されていたものでしたが,「ドルビーHX PRO」はそれを改良したものになっています。もっとも"PRO"というのは別にプロ用というわけではなく,単に"Process"を略しただけのものだそうで,ドルビーは優良誤認を狙っていたのでしょうかね?
 この「ドルビーHX PRO」は上述の通り録音時に働くシステムであり,これにより録音されたテープは,単に高域が改善された録音ということだけなので,どんなデッキやラジカセでも再生可能になっています。一部デッキにはこの「ドルビーHX PRO」をオフにするスイッチもあるようですが,本機を含め多くのデッキは,この「ドルビーHX PRO」は録音時常時ON,という仕様でした。

 最後に本機は,MPXフィルターのON/OFFができるようになっていました。本機購入時はほとんどFMエアチェックには使っていませんでしたので,MPXフィルターは常時OFFにしていました。

 というわけでお待たせいたしました。次回いよいよ使用記ということになります。

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