後付けの理屈で成り立つWindows11
Windows11がリリースされて5日経ちました。10月13日水曜日のWindows Updateでどうなるのか今は全く見当がつかないのですがも,あんなに脅された割りには結局無事に適用でき(2021,10,13更新),とりあえず,我が家にあるCore i7-7700Kの自作6号(ASRock Z170Pro 4S。TPMは2.0)と,Xeon E3-1225v3の富士通CELSIUS J530(TPMは1.2)はなんとか動いているようで,さちにはTPMもセキュアブートも対応していない自作5号(BIOSTAR G31-M7TE Ver.6.4)(2021,10,13追記)大きなトラブルも今のところ体験していません。
リリース直前から現在に至るまで,最近本当に毎日よく覗くようになった「ソフトアンテナブログ」の記事をチェックしてみると,
「Microsoft VPSはWindows 11のゲームパフォーマンスを低下させる」
https://softantenna.com/wp/windows/microsoft-vps-windows-11-performance/
「Microsoft、Windows 11のファイルエクスプローラーが大量にRAMを消費する問題を修正へ」
https://softantenna.com/wp/windows/microsoft-fix-windows-11-file-explorer-ram-usage/
などなどと,あの日本時間6月25日未明にマイクロソフトのお偉方が,特にゲームについて「Windows11はゲームに適したOSだ」と豪語していたのは一体なんだったのかという事態が次々起きているようです(上記ソフトアンテナブログの記事ではうちの7700Kのような古いCPU(MBECという機能を持っていない)で起こりやすいような書き方をしているが,他のサイトも読んでみる限りWindows11全般に起こりやすいとのことらしい)。なおエクスプローラーの件については,そう言われれば確かにたくさん開くと若干の速度低下を感じることもありました。
そんな中先日見かけた記事。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1356356.html
Windows11が「パンデミックを機に生まれた」というのには噴飯してしまいました(いや本当はそのときご飯は食べていなかった)。確かにコロナ禍でオンラインでの会議は増えたけど,私の場合,なんとなくパソコンよりもiPadの稼働率が上がったような気がするのです。そして今,目の前にあるマイクロソフトサポート対象外のWindows11機を触っていて,コロナ禍だからこそ使いやすくなったWindowsの機能があるかと言われれば,「いや,Windows10の時と何も変わらない」と答えるしかありません。
まさに後付けの理屈ですね。
いや,Windows11は本当に,「後付けの理屈」で成り立っているOSなのではないか,という気がしてならないのです。
その一番が例のシステム要件問題。インテルでいえば第7世代以前のCPU,TPM1.2またはTPMなし,セキュアブート非対応ではWindows11が動かない,ことになっているのですが,結局マイクロソフト自身が,「サポートはない。Windows Updateが動かないかもしれない」と警告しながらも,
「Microsoft、大量の警告とともにWindows 11のTPMバイパス方法を公式に発表」
https://softantenna.com/wp/windows/microsoft-announce-tpm-bypass/
などというリリースを出す始末。あほかとしか言いようがない。セキュリティに関するOS内部の作り込みを一切やっていないことを認めたようなものです(ただし今後のアップデートでセキュリティ対策を進めていき,要件を満たさないマシンでは物理的にWindows11が動作できなくなるという可能性も否定できない)。
インテルで言えば第7世代以前のCPUを対象外としたのは,いわゆる"Spectre/Meltdown"問題が公表される前のCPUだから,と言われているのですが,そう言えばマイクロソフトは,以前こんなことも言っていました。
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1810/17/news122.html
「4年以上前のパソコンを使い続けるとメンテナンスコストがかかるから,新しいパソコンに買い換えよう」という趣旨でしたか。当時も都合のいい論理だなと思った記事でした。確かに,Windows95とか,WindowsXPについては,4年前のパソコンに入れるのはかなり無理があったように思いました。でもその頃はCPUの進化も劇的で,ユーザもその状況を受け入れるしかなかった。「10年以上前のパソコンでもWindows10が軽々動く」,というような状況になったのはごく最近のことです。
そう言えばインテル第7世代のCPUのリリースはWindows11開発公表時の4年半前のこと。マイクロソフト社内に「4年経過したパソコンは『ゴミ』」という意識が今も続いていて,"Spectre/Meltdown"問題に関わらず,単純に4年前のCPU機のサポートを切り,後付けで「セキュリティ上問題があるから」と言い出したように思えて仕方がありません。
それでもOSを新しくすることで何か新味を出さないといけないので,「Windows11は処理速度が上がっている」ようなところを見せないといけない。Windows11はインテルの新アーキテクチャである第12世代"Alder Lake"に最適化されている,という情報も流れています。
実際上記マイクロソフトサポート対象外の機種では,いやついこの間までWidnows11を入れていたCore2 Quadを載せた自作5号(BIOSTAR G31M7-TE V6.4)でも,Windows11はそんなに不自由なく動いていた。
それは対応CPUを絞ったことによりOS側での"Spectre/Meltdown"対策を省いたからだとも言われているのですが,実はこのWindows11,富士通のワープロソフト,OASYS V10やIMEのJapanist2003が全く動作しないのです(Windows10対応したJapanist10は動く)。
OASYS V10やjapanist2003はよくよく考えればWindowsXP時代のソフトウェア。一応「Windows10対応」だと言っていたけれど,これはひょっとすると,Windows10までは搭載されていた,古いソフトウェアを動作させるための仕組みが,Windows11ではばっさり削除されてしまった,だからWindows11は貧弱な環境でもそれなりに動いているという理由ではないのか,と思い至ったのです(そしてこの情報を早期に掴んだ富士通が,Windows11リリースの1年以上前にOASYS/親指シフトの打ち切り判断をした,という想像もしている)(→その後分かったことを文末に追記しています。2021,10,17)。
しかし,パフォーマンスの面では,
「AMD、Windows 11でパフォーマンスの問題が発生することを認識」
https://softantenna.com/wp/windows/amd-confirm-windows-11-performance-issues/
という問題も起こしているようです。いやAMDも気がついていたのならWindows11がリリースされる前に言えよ,とも言いたくなるところです。しかし本当のところパフォーマンス面では今回,マイクロソフトはかなりインテルに忖度したのではないかと。しかしあからさまにインテルに肩入れしたことがばれると大変なことになるので,古いソフトウェアのサポートを切って見かけ上のパフォーマンスを維持したつもりだったが,それでもAMD製CPUではパフォーマンスが落ちてしまった,ということなのかも知れません。ここでもやっぱりWindows11の「後付け」感がつきまといます。
ところで今朝,当地でもWindows11のCMがテレビで流れているのを見ました。
https://www.youtube.com/watch?v=xUjCWXy4Kzk
ここで描かれているWindows11の世界は明るく楽しそうなものなのですが,実際にYouTubeでWindows11に関する動画を検索してみると,結構多くヒットするのが,「非対応パソコンにWindows11をインストールする」という動画。上記のマイクロソフト謹製CMの明るくかわいいイメージと違い,おたくっぽくって,なんだか泥臭い動画が次から次へと表示されます。そう言えば拙ブログでもここのところアクセス数は急上昇しており,実に数年ぶりに多くの皆様にご贔屓をいただいているという状況です。ま,拙ブログもおたくっぽくって泥臭いということなのでしょうが(爆),多くのパソコンを抱える企業では今後頭の痛い問題が待っているものと思われます。
うちの勤務先ですが,実は私が転勤してくる前の令和元年度に多くのノートパソコンを導入しており,しかもそれらがことごとくインテル第7世代CPUを搭載した機種だったりするのです(ちなみに私にあてがわれているのはなんとWindows8.1機(火暴))。
拙webページで親指シフトキーボードを搭載した富士通ノートパソコンを追いかけていたことがあったのですが,
http://kusup.la.coocan.jp/oaatja10.htm
Windows11に対応している第8世代CPUを搭載したLIFEBOOKが登場したのが平成30年始めのこと。上記ページを見てもらったらわかるのですがこの頃勃発していたのが「CPU品薄問題」で,当時はLIFEBOOKのオンライン見積もりがなかなかできない状況でした。そのような状況の中ようやく令和元年にうちの職場で大量に調達できたのが第7世代CPUのマシンだった,ということなのでしょう。
「Windows10は最後のWindows」という,今となっては単なる噂話に過ぎなかったものをまともに信じた職場の上位組織では「今後各自に割り当てたノートパソコンは故障するまで使ってもらう」ということに数年前決めてしまっており,そのことも含めて今後一体どうしていくのだろうという不安があります(いや私は「不安」程度で済んでいるが,実際に調達を担当する職員の心中はいかばかりか…)。
Windowsの世界がこんなことになってしまった以上,勤めをしている間は互換性のこともありマイクロソフトのWindows/Officeを使い続けるとは思うのですが,年金生活に入ったらきっぱりWindowsとOfficeから足を洗って,Linuxと互換Officeに移行してもいいんじゃないかなぁ,と本気で思っているところです。
いや個人レベルならともかく,この流れが企業でも進んでいくとどうなるか。「マイクロソフトOffceなんか使わなくても,Google Workspaceで十分じゃないか」と多くの人が気づいたときが,マイクロソフトがデッドエンドを迎える時なのではないか,という気がしています。
マイクロソフトがそうならないためには,各ユーザになんとかしてWindowsを使い続けてもらうためにも,まずはWindows10について,2025年10月14日とされるサポート期限を延長するしかないのではないか,という気がします。
パソコンが売れないから,動作要件を厳しくして,前OSのサポート期限までにパソコンを買い換えさせるためにWindowsのバージョンアップをしたという,ここでもまたまた「後付け」の理屈が見え隠れするWindows11なのですが,多くの人々がスマートフォンやタブレットでいろいろなOSを縦横無尽に使っている現在,そう簡単にマイクロソフトの理屈に誰もが乗ってくるとは,なかなか思えないところです。
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(2021,10,17追記)
改めてJapanist2003のインストール試験を行ったところ(上記自作5号にて。ビルド22000.258),Japanist2003が正常にインストールでき,入力もできました。ただ仮想環境に入れているDevチャネルのビルド(22471.1000)ではJapanist2003は動作しなかったので,Windows11の次期バージョンでJapanist2003が動作しない可能性が引き続き残っているということが言えます。Windows11のVer.21H2のサポート期限が2023年10月10日と現在アナウンスされているので,japanist2003でないと困るユーザの方は,Windows10にとどまっておいた方がいいのかも知れません。
OASYS V10が動作しない理由についても,「レジストリキーにASCII以外の文字が含まれているとソフトが動作しない」
https://softantenna.com/wp/windows/windows-11-non-ascii-resistry-key-issue/
ことが原因ではないか,という説が出ています。ただこのレジストリキーの扱い,マイクロソフトが知らずにやってしまったことなのか,それとも動作改善のためにあえてやったのかがはっきりせず,後者の場合だとマイクロソフト側での修正は考えられないことになります。もちろん数年後のOASYSサポート終了を公表している富士通の側でOASYS V10を修正するということも考えにくいため,今後注視し続ける必要はあると思いますが,OASYSユーザはWindows10が動く(可能なら富士通製の)マシンを,オークションでよいので何台か確保しておくことがベターかも知れませんね。
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(2021,10,23追記)
現在Cリリースで公開されているビルド22000.282(上記レジストリキーの問題を解消したと言われる)でOASYS V10のインストールを試したのですが,やはりインストールはできませんでしたので,上記の問題とは無関係だったと思われます。
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(2022,1,30追記)
すでに下記記事,
【メーカー非保証】Windows11上でもOASYS V10動作する: くすぴーのぼらぼらBlog2 (cocolog-nifty.com)
でも紹介している通りなのですが,ファイルの関連づけの設定を変更することにより,OASYS V10はWindows11上でも動作させることが可能です。ただしメーカー側ではWindows11には対応しないと公式にリリースを出しています。
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