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2022年7月17日 (日)

クラウンは終わった…。

 実に16代目となるトヨタ・クラウンが一昨日お披露目となったそうです。
 今度のクラウンは初代以来となる全車4気筒エンジン(今のところ)で,2400ターボ・ハイブリッドと2500ハイブリッドの2種のエンジンを持ち,大まかに言えば2種類の4ドアクーペと2種類のショートワゴンボディを持つクルマになったのだそうです。

 「今度のクラウンはSUVになる」という観測気球を上げていましたが結局,上記合計4種類のボディが登場し,今回リリースされたのは背が高い4ドアクーペの「クロスオーバー」のみで,「SUVになるぞなるぞ」と言いながら,先代のクラウンとそんなにイメージが違わないデザインとなりました。
 今後登場するのが,ショートワゴンボディの「スポーツ」,背を低めた4ドアクーペの「セダン」,「スポーツ」よりもう少々ラゲッジを広げた「エステート」なのだそうで,昨年の電気自動車の発表同様,この3車種についてはいまのところはりぼてモックアップでの発表にとどまったようです。

 SUVということなので4輪駆動なのだそうですが,実は今回のクラウンで驚いた,というか「やっちまったなぁ…」と思ったのが,

 FF方式(をベースにし,アルファード等のように後輪はモーターで駆動する4輪駆動)

ということです。実は今回のクラウンはTNGA(どうしてもあの商品が…以下略)のGA-Kプラットフォームがベースとなっており,つまりカムリ・レクサスESや米国向けのアバロン,ハリアー・RAV4・レクサスNXなどなどと同じベースを持つクルマに成り下がってしまった…ということなのです。
 というわけでフロントサスペンションもクラウンとしては初めてのストラット式となり,ストラットが悪いとは言わないのですが,V6エンジンを載せるためやむなくストラットサスペンションを採用した6代目セドリックのことを思い出してしまいます。

 カムリやハリアーで定評のあるGA-Kプラットフォームを流用したことにより,予想外に販売が失速した15代目クラウンの後を担うべく,短期間で16代目クラウンが開発できたのだろうと思うのですが,この開発期間の短さが,クルマの煮詰めの甘さや,予想外のトラブルのもとにつながらないか,非常に気になるところです(すでに電気自動車bz4xでそのことは露呈してしまっている)。
 それから,15代目から続く4ドアクーペボディもなんとかならなかったのか,というか,15代目クラウン(加えて現行レクサスLSも)の売れ行きが失速した大きな原因は,このハッチバックのような「4ドアクーペ」のデザインにあると思うのですが,その反省が全くないまま,16代目クラウンでも踏襲してしまった(しかも今後登場する「セダン」も4ドアクーペスタイル)のはどうしたことなのか。確かにメルセデスもBMWも4ドアクーペのラインナップはあるけれど,メルセデスやBMWは普通の「4ドアセダン」もきちんと作っている。4ドアクーペはかっこいいかも知れないけど,リアが鈍重なイメージになるというマイナス面もあるような気がするのです(もっとも,「4ドアクーペ」ボディに対する反省が,今のトヨタでは社内の事情で全くできないのかも知れない。お気の毒としか言いようが…)
 GA-Kプラットフォーム導入により,車幅も1840mmとなりました。「クラウンは国内の道路事情を考えているからいたずらに幅を広げません」というお約束は,ここで破られてしまったことになりますね(もっともそのため15代目はひょろ長いボディスタイルになってしまい,欧州他車に比べて押し出し感に欠けるスタイルだった)。

 ニュースリリースには「革新と挑戦」という言葉が踊っているのですが,どうにも今回のクラウン,手持ちのコンポーネントを使ってちょちょいのちょいと作り上げられたようにしか見えない。16代にわたるクラウンの歴史で,「革新と挑戦」とは裏腹に,一番お手軽に作られたモデルになってしまったような気がします。4種設定したボディはなんとなくトヨタの自信のなさを裏返しにしている印象もあり,徳大寺有恒さんが生きていれば,昔2代目日産パルサー(ラングレー/リベルタビラ)を批評した時に使っていた「クルマはワッフルのようにぽんぽん作るようなものではない」と,また言われるのだろうな,と思いました。

 今度のクラウンは国内専用というわけではなく,アメリカをはじめ海外に打って出る車種だといいます。確かにある程度は売れるかもしれない。
 しかし,格下のGA-Kプラットフォームを導入してしまったことにより,いずれにせよ,クラウンはカムリと同等の車種に成り下がってしまった,ということは指摘しておかないといけないと思います。
 GA-Kプラットフォーム導入により,16代目クラウンは低価格になった,というメリットも確かにあります。しかしそれは,「日本から本当の意味での高級車がなくなってしまった」(センチュリーやレクサスLS/ISがあるというご意見もありましょうが,あまり売れていないので…)ということを意味するのではないでしょうか。
 従来のクラウンで満足していたユーザが次の車を考えるとき,今度のクラウンでは物足りなさを感じてしまい,より本格的な欧州車を購入しようという流れが,今後一層進むのではないかと思います。
 一方私は,先代の15代目クラウン,あれははっきり言って好きではなかったのですが,16代目クラウンを見てしまった後は,「ニュル(ブルクリンク)で鍛えられた」15代目クラウン,あれはあれで貴重な存在だったのではないか,と思うようになりました(10代目日産スカイラインのようなものですね)。
 かといって私は15代目クラウンを買うつもりはないのですが,今15代目クラウンを所有しているユーザは,世の中からガソリンがなくなるまで大事に大事に乗り続けた方がいいと思いますし,「やっぱり後輪駆動の15代目クラウンがよかった」と思う人は,今すぐ中古車センターに行って,掘り出し物を見つけるのがいいのではないかと思います。

 これまで15代にわたった旧世代クラウン,ちょうど15代続いた徳川幕府になぞらえ,今度の16代目クラウンは「明治維新だ」と言われたりするのだそうですが,果たして明治維新の末路がどうなったのか,トヨタの方々はご存じなかったのでしょうか…ね?

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コメント

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あとひとつ,GA-Kプラットフォーム導入のメリットがあるとすれば,クラウンを扱い始めたものの過去からのノウハウがなく,拡販に躊躇していたカローラ店やネッツ店でも,16代目クラウンなら扱いやすいという点でしょうかね。
整備部門でも,従来カローラ店やネッツ店で扱っていた車種とそう手間が変わらないので,メンテナンスがやりやすいことでしょうね。
しかし,カローラ店やネッツ店で,「クラウン」を買って,トヨタ店同様のおもてなしを受けられるかどうかは,少々疑問が残るところでしょうが。

投稿: くすぴー | 2022年7月18日 (月) 10時52分

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