黄昏のクラウン…。
16代目クラウン(クロスオーバー)をちらほら見かけるようになりました。そして,残り3ボディの発売時期も明らかとなりました。
この秋に登場予定となったのが,5ドアハッチバックの「スポーツ」と,結局従来通りのFR方式となった「セダン」の2種類。「スポーツ」は2400ccのスポーツハイブリッド(2500ccの通常版ハイブリッドも用意される噂もある)が用意され,遅れて冬にはプラグインハイブリッドも用意されるということです。
一方「セダン」はハイブリッドに加え水素燃料電池車も用意されるとのことです。「エステート」はさらに遅れて2024年の登場予定で,5メートル弱の全長ながら5人乗り仕様と言われており,ややショートワゴン的な性格となるのではないかと思います。
「セダン」はFFベースではないことが明らかになったのですが,昨年7月のプレスリリース時点で,同社の水素燃料電池車「ミライ」とデザインが酷似していたことが噂されており,実際に「クラウン・セダン」にも水素燃料電池車が追加されることが明らかになったことから,2020年末に発売されたばかりの2代目「ミライ」は,リリース後わずか3年にしてディスコンになる,とも予想されています。
鳴り物入りで登場した2代目ミライでしたが,なんと初代ミライよりも売れていない,という現実があり,ここで「クラウン」に衣替えして挽回を図ろう,という魂胆が見え見えです。ただ,2代目ミライのフェイスリフト版,というわけでもないらしく,ホイールベースは8センチ延長して3メートルにする,という手直しもなされるようです。
ただ私は,「2代目ミライがあまりに売れなかったので,ビッグマイナーチェンジを機に,ホンダ・クラリティのようにハイブリッド版を追加した」となんとなく受け止めています。2016年に登場した水素燃料電池車のホンダ・クラリティは日本では泣かず飛ばずの状況で,2018年にプラグインハイブリッド車を追加した(アメリカの一部では電気自動車仕様も追加された)もののやはり日本では売れることなく,2021年に販売が終了してしまいました(国外ではまだ販売されているとのこと)。
ハイブリッド仕様を追加した「クラウン・セダン」は,ホンダ・クラリティの二の舞にならないかもしれないのですが,2代目ミライ譲りの高級感があまり感じられないボディスタイルで,果たして旧来のクラウンユーザの心を掴むことができるのかが見ものでしょう。
そして,クラウンのボディ追加発表と前後して,10代目カムリがなんと今年末をもって国内での販売を終了するというニュースが流れました。
カムリも歴史をたどれば紆余曲折の大きいクルマで,初代はなんとセリカのセダン版と銘打ち,セリカとコンポーネントを共有する2代目カリーナの双子車として登場し,カローラ店の上級モデルとして,また,新たな販売チャネル「ビスタ店」のラインナップのひとつとして登場しました。
一転して2代目はトヨタ初の横置きFF車として登場。しかしリリース直後は1800ccエンジン・5速マニュアルミッションのみという仕様で登場し,急拵えな印象もありました(この頃7代目コロナが3代目セリカ/カリーナベースで登場,そして翌年FF化された8代目と並行して販売されるような動きもあり,今となっては謎が多い出来事だった)。
カムリの絶頂期は初代セルシオのイメージをうまく流用した4代目で,この時は本当に爆売れしていました。しかし国内でのカムリはこれ以降ジリ貧となってしまいます(ただしアメリカではホンダ・アコードとならび人気車種となる)。10代目の現行カムリは,2020年に全トヨタディーラーでの扱いが始まり,一方でクラウンに次ぐ高級車マークXの販売終了により,確かに爆売れはしていないけど先々代や先代カムリよりは売れているだろうと思っていたので,意外でした。
ディーラーは,現在のカムリユーザに今後クラウン・クロスオーバーを勧めていくことになるのでしょうか。赤いルーフのカムリ(これがヤリスみたいでガキっぽい)の代替えをするユーザはともかく,「クラウンでは豪奢なイメージがある」のでカムリを選んできた人たちにとっては,次に購入すべきトヨタ車がなくなってしまうということであり,いくらセダンが不人気とはいえ,これで本当によかったのかなぁ,共倒れになりやしないかなぁ,という印象があります。
いずれにしても,電気自動車の開発が大幅に遅れているトヨタは現在相当焦っているはずであり,カムリユーザをなりふり構わずクラウンに誘導しようとする姿を見ると,トヨタのデッドエンドがもうそこまで来てしまったのかなぁ,と思わずにはいられません。
あ,ちらほら見かけるようになったクラウン・クロスオーバーですが,やっぱりなんだかディテールがおかしいデザインのような気がします。最近のトヨタ車はボディサイドがなんとなく平板な印象があり,それをごまかすためにサイドにいろいろな線を入れまくってしまい,ゴチャゴチャした印象で伸びやかさに欠ける印象があります。それとホイールベースとタイヤサイズの関係もなんだかおかしく,立派なタイヤを履いているのにホイールベースが短めなので,前後のオーバーハングが長く,寸詰まりな印象があります。
せめてボディカラーを独特なものにすれば「おおっ」という印象は得られる(コマーシャルで使っているカッパーブラウン色は悪くないと思う)のですが,ユーザの方がまだまだ新しいクラウンについていけてないのか,15代目までのクラウンと同じように白色や黒色を選んでしまっているので,せっかくメーカーが頭を振り絞ってデザインしたボディを台無しにしてしまっている感じがします。
16代目クラウンを選ぶくらいなら他の車を考えるべきだとは思いますが,どうしても16代目クラウンが欲しいのであれば,メーカーの主張に沿って,思い切った色を選んだ方がいいのではないでしょうか…。
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