AI戦争前哨戦は,アップルの勝ち,かな?
さる5月下旬,マイクロソフトは"Copilot+ PC"なるAI対応パソコンを発表しました。
とりあえずはArmベースであるクアルコムのSoC,"Snapdragon X"を搭載したパソコンが近日中に登場し,次いでAMDのRyzen AI 300搭載パソコンが登場して,さらにインテルの"Lunar Lake"系列のCPUを搭載したパソコンが登場する予定だとのこと(x64系のCPUに対応するCopilot+の機能搭載は若干遅れるという話もあります)。
これらのSoC/CPUにはニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)が搭載されている。マイクロソフトでは"Copilot+ PC"と名乗れるパソコンの,NPUに関する性能要件を40TOPS(毎秒の演算回数が40兆回)以上と定めているそうですが,
・Snapdragon X … 45TOPS
・Ryzen AI 300 … 50TOPS
・Lunar Lake …… 48TOPS
ということになのだそうです。実はWindows向けのNPU付きCPUとしてすでにインテルの"Meteor Lake"系列のCPUや,AMDのRyzen 7040Uがあるのですが,
・Meteor Lake …… 11TOPS
・Ryzen 7040U …… 10TOPS
ということで,これらのCPU搭載機は残念ながら"Copilot+ PC"とは名乗れないという,厳しい現実があるようです。
一方,Macに搭載されているAppleシリコンのMシリーズでは,すでに2020年からNPUが搭載されているのですが,その性能は,
・M1系 …… 11TOPS
・M2系 …… 15.8TOPS
・M3系 …… 18TOPS
で,Macではなく先般iPad Pro用に搭載されたM4ではNPUの性能がかなり向上したとはいえ38TOPSなので,「AI機能をフルに使いたいならアップル製品ではなく"Copilot+ PC"なのだよ」と,マイクロソフトは声高に言いたいところなのでしょう。
(↑2024,6,30追記…ところが肝心のSnapdragon Xの性能が実はそれほどでもない,という情報もあるようです。)
ところがそんな,マイクロソフトから見ればNPUの性能が高くないはずのMac向けに,"Apple Intelligence"なるAI機能を開発して次期mac OSに搭載し,しかもその"Apple Intelligence"はリリースから4年になろうとしているM1 Macでも使えるというのですから,大変驚きました。
本稿ではいちいち書きませんが,この"Apple Intelligence"でできることが,生活の中での具体的な場面を例にして紹介されていたので非常にイメージがつかみやすい。
「"Copilot+ PC"はすごい」とマイクロソフトは言ったけれど,その具体的な例が,デスクトップのスクリーンショットを数秒ごとに撮影し,AI機能で検索できるという,しかし発表後さまざまな方面から批判を浴びた"Recall"機能(結局
プレビュー版での公開に後退せざるをえなかった。そしてこの機能,"Copilot+ PC"でなくても動いてしまうという情報が)位という体たらく。
AI機能を利用するのに,これまでのデータセンターに寄りかかったやり方だと,今後恐ろしいほどの負荷と莫大な電力が必要になることから,マイクロソフトとしては高性能なNPUを持つCPUを"Copilot+ PC"として売り出し,AI処理をなるべくローカルで処理させて,データセンターの負荷を抑えたい目論見があるのでしょう。
一方アップルも,基本的には,"Copilot+ PC"よりは性能が低いはずのNPUをまずは使って,ローカルでAI機能を動かすことを基本としているようです。それで処理能力が不足した場合は,省電力Appleシリコンを多数搭載したサーバーを設置したデータセンター,"Private Cloud Compute"にデータを暗号化・非保管で処理し,それでもダメな時はユーザーの許可を得て"ChatGPT"につなぐという,3段構えのAI処理を導入しようとしているようです("ChatGPT"につなぐとは何事か,と怒る電気自動車屋兼SNS屋さんがいますが,あの人最近落ち目だから,話の信憑性がいまひとつ…)。
さてこの勝負,マイクロソフトとアップルのどちらが勝者となるのか。もっともMacのAI機能は,日本語では2024年内開始は無理だそうですし("Private Cloud Compute"を世界中に整備するのにじっくり時間をかけられる,というメリットもあるかもしれない。アップル製のマシンしかこのデータセンターに接続させないはずだから,そういう意味でもゆとりがある),"Copilot+ PC"を我が家で導入することになっても,Windows10のサポート終了後(正確にはWindows11 Ver.23H2のサポート終了後)の導入となりそうですから,いずれにしても来年までお預けということになりそうです。でもなんとなく,AI戦争前哨戦の勝者は,マイクロソフトではなくアップルだったんじゃないのかなぁ,と思ってはいます。
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