PCが使えなくても何も困らない
インテルから,主にゲーマー向けを中心としたデスクトップ用CPUのCore Ultra 200Sが登場したそうです。先代や先々代の13・14世代Core iシリーズが,ここしばらく例の不具合騒動でイメージダウンしてしまっていたため,待望の新CPUということになりましょうか。性能的には13・14世代Core iシリーズから1割程度の向上でしかないものの,省電力性能がかなり向上しているのだとか。
インテルのデスクトップ向けCPUとして初めてNPUを搭載しているのも売りなのですが,その性能はなんと13TOPS。おいおいうちのMac MiniのM2の方が高性能じゃないか(15.8TOPS)。これではこのCPUを使って自作PCを作っても"Copilot+ PC"にはならないではないですか。
もっともデスクトップ用CPUなので,CPU部分やGPU部分を合わせてAI処理に使えば合計36TOPS,さらにグラフィックスカードを搭載すれば相当なAI性能を持つことは分かりきっているのですが,どんなに性能が良くても今のところ"Copilot+ PC"の認証は得られないので,Windows11付属の多彩なAI機能を使うことはできない。
たぶん11月になり,x64用の"Copilot+ PC"の仕様が明らかになれば,NPUだけでなく,内蔵・外付けを問わずGPUを利用した"Copilot+ PC"の姿も明らかになるとは思われるのですが,今のところそんなことはマイクロソフトは一言も言っていない。
しかしNPUをちまちま使ったAIよりも,GPUをごりごり使ったAIの方がスピーディで快適なはず。そのようなデスクトップPCであれば「サードパーティのアプリに搭載されたAI機能が快適に使える」というのであれば,現状の"Copilot+ PC"に搭載されたAI機能は単なるおまけプログラムのようなものなのか。
そう誤解されてもしかたがない。マイクロソフトが必要以上にかけたさまざまな「制限」が,リリース3年を過ぎていまだに低迷が続いているWindows11の体たらくを招いているのだろうとは思います。
さて,久しぶりのこの人の先週のコラム。題は「PCが使えないと何が困るのか」。
・スマホやタブレットでいろいろな作業をするには高度な技能がいる。
・しかしその技能がなければ生産性は落ちる。
・生産性が上がらないことで失うものは大きいから,困る。
と,結論にお書きになられています。その結論を述べる前提として,
・スマホよりもPCの方が効率的で,タイムパフォーマンスもよい。
としており,その理由としてキーボードによる日本語入力や,大型画面の利用や複数画面の利用が可能なことを,具体的に述べておられるようです。そしてその問題提起として,スマホの普及によりPCは日常生活で特に必要ではない,と言われるようになったものの,
・悪いことは言わないからPCには慣れておいた方がよい。
とされているのです。
この方は著述業,特にメディア関係の文章を多く書かれる方なので,取材活動にそれをまとめて原稿に仕上げる作業等,言われる通りPCを使った方が便利だと思われます。だからこの方の生活範囲では言われていることは全く正しい。もっと言うなら24インチのディスプレイを「モバイルディスプレイ」と称して持ち歩くくらいなら,親指シフトによる入力方法を導入した方がよっぽど効率的だとアドバイスしたいところなのですが,本論とは関係ないのでここまでにしておきましょう。
要するに自分で作ったデータが自分の範囲で完結している状態であれば,快適な画面と快適な入力方法,快適なデータの送受信ができる"PC"というのは誠に効率的であると確かに思います。
しかし世の中はそうではなくなった。20年前とは比べ物にならないほどの情報セキュリティの強化により,業務で使うデータのやりとりは非常に面倒なものになってしまった。
情報セキュリティの強化により,「勤め先の仕事の続きを家に帰って仕上げる」ということがほとんど不可能になってしまいました。そりゃあ,ふた手間もさん手間もかければデータの持ち出しはできないことはないのですが,そうして苦労してデータを持ち帰ったところで,浴びるように酒を飲んでしまえば仕事の続きなんかするはずもなく,わざわざ危険を冒してまでデータを持ち帰る理由がない。
私の場合,拙いwebページやこの拙いブログを細々と運営するには,やっぱりPC(WindowsではなくてMacですけど)の方が便利なような気がするし,ネットで買い物をする時も,iPhoneやiPadで買うのはどことなく不安なので,必ずPCを使うようにしている。しかしそのようなしがらみがなかったとしたら,私生活にPCは全くいらないかも知れない。職場ではPCを使うだろうけど,第5世代インテルCPU搭載のどうしようもないノートパソコンでは,メモリをいくらフル実装しようが,SSDを導入しようが,まったく作業効率は上がらない。27インチ4Kディスプレイと富士通の親指シフトキーボードを装着したM2 Mac miniは非常に快適だが,データを職場から持ってこられない以上,その快適なMac miniで仕事の続きをすることはできないのです。
うちの嫁がいい例です。職階が上がったことにより,職場では以前よりPCを使うようになっているらしいのですが,データの持ち運びがまったくできないので,家でPCを使った仕事をすることは完全に不可能。インターネットはスマートホンで問題なくアクセスしているため,嫁用のノートパソコンの出番が全くない。だからWindows10サポート終了が近いているというのに,購入16年を経過したCore 2搭載のノートパソコンの買い替え話が全く進まないのです(あ,Windows11 Ver.23H2にしているのだった)。
フリーランスの方はその辺りの事情がてんで分からないのかも知れないけど,一般の勤め人はどこもそんな状況だと思います。PCを使わなくなったからといって,多くの人にとっては,それが「緊急事態」ではないということを,パソコンジャーナリズムの人たちには深く理解をしてほしいと切に願うのであります。
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